平郡島西地区

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島の風景2023/02/04

石垣と白い木の謎

潮風が強い平郡島の海岸にそって、民家を守るための石垣が張り巡らされています。

一見全て同じに見える石垣ですが、年代によって構造が少し違います。
上の写真は最も古い石垣のひとつで、石のみで積み上げられています。そして右の写真は比較的年代の新しいもの。より強固にするため、つなぎにコンクリートが使用されています。
建物の被害を最小限にするため、島の建物は殆ど平屋造りです。屋根は高い石垣と、石垣に沿うように植えられた植栽に隠れ、港側からは殆ど見えません。まるで南の島と錯覚してしまうような景観は、強い風と波から家屋を守る、という共通点があるからでしょう。

海沿いを歩いているとよく目にするものに、地面に打ち込まれた白い木があります。
一見風化したようにも見えるこの木、実はビャクジ(イブキビャクシン)という非常に堅牢な木で、なんと古いものは、江戸時代から姿を変えることなく立っているのだそう。潮風にあたっても腐食しないビャクジは、昔から船をつなぐ杭などに重宝されました。
平郡の旧波止場にもこの杭がたくさん残っています。石垣を縫うように突き出た杭が、当時、平郡島に停泊する船が多かったことを物語っています。


島の風景2023/01/28

島の鍛冶屋跡

交通が未発達だった時代、島の人々はくらしの全てを島内で賄っていました。
農具や刃物を製造する鍛冶屋は、島民にとって欠かせない産業で、最盛期は10件ほどの鍛冶屋があったと言われています。
その中の一軒が、今回取り壊されるということで、ご厚意で解体現場にお邪魔することができました。
向かって右手にレンガ造りの炉、左手にたたき場があります。このお宅では主に鍬などの農具が造っていたそうです。

母屋の横には納屋があり、当時の農具がとてもきれいな状態で保存されていました。
左上の写真は背負子です。丸い背当てがキュートです。手提げ袋や箒など、工夫を凝らして手作りされていた様子がうかがえます。
当時の台所も残されていました。炉のレンガを転用したものでしょうか。カスタマイズされたマッチ置き場はオーダメイドならではですね。

干場の天井と滑車
葉たばこ干し塔

こちらのお宅は葉たばこも生産されていたらしく、鍛冶場の横には乾燥室が残されていました。梁の滑車は、葉たばこを上げ下げするのに使われていたものです。
潮風の強い平郡島は、風の影響を受けにくい、平屋づくりの住宅が多い集落です。
そのため、2階は遮るものが殆どなく、乾燥室として最適だったと思われます。平郡島の葉たばこは質の良さに定評があり、品評会で何度も表彰されたそうです。
葉たばこ栽培が盛んだったころは30塔を数えた乾燥塔も、今では数件が残るのみ、現在は葉たばこ農家は全て廃業し、稼働している乾燥塔はありません。下の写真は別のお宅の乾燥塔です。最後まで葉たばこ栽培を行っていた農家さんの一人で、そのため乾燥塔の状態も比較的良好ですが、使用目的を失った乾燥塔は急速に風化していきます。
島の風景から乾燥塔が消えるのは時間の問題かもしれません。



島の暮らしも近代的になり、昔ながらの設備を残す住宅は少なくなってきました。
貴重な資料を撮らせていただき、ありがとうございました。